首都圏中古マンション市場、価格帯で二極化の兆し
最近の首都圏中古マンション市場では、成約件数が4ヶ月連続で減少し、成約㎡単価(へいべい単価:1平方メートルあたりの価格)も3ヶ月連続で下落しているというデータが発表されました。これだけを見ると、「これまで上昇を続けてきたマンション価格がいよいよ下落局面に入ったのでは?」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、マンションリサーチ株式会社の調査によると、市場全体を詳しく見ていくと、単純な価格下落ではない、価格帯ごとの「二極化」が進んでいることが明らかになりました。今回は、この興味深い市場の動きを深掘りし、これからの住宅購入や売却を検討する上で知っておきたいポイントをご紹介します。
「売り出し価格」と「実際の成約価格」の違いに注目
東日本不動産流通機構のデータを見ると、新規登録物件(売り出された物件)の㎡単価は下がる傾向にある一方で、実際に売買が成立した成約物件の㎡単価は、大きく下落しているというよりも横ばいに近い動きを見せています。

これは、売主が価格を抑えて市場に出すケースが増えているものの、実際に売れている物件の価格はまだ一定水準を保っている、と考えることができます。つまり、市場全体が冷え込んでいるというよりは、売主と買主の間で価格の認識調整が進んでいる段階と言えるでしょう。
「在庫㎡単価」の上昇が示すもの
さらに注目すべきは「在庫㎡単価」の推移です。成約㎡単価が横ばいから下落傾向にある中、在庫㎡単価は一貫して上昇を続けています。これは一見すると不思議な現象ですが、その背景には「どの価格帯の物件が在庫として残っているのか」という重要なポイントがあります。
「1億円」が市場の大きな分岐点に
今回の調査で特に顕著だったのは、価格帯によって中古マンションの売れ行きが大きく異なっている点です。
1億円を超える高額物件は在庫が増加傾向
「5億円超」「2億円~5億円」「1億円~2億円」といった1億円を超える価格帯の物件では、いずれも在庫数が増加傾向にあります。特に5億円超の物件は在庫が高止まりしており、売却までに時間がかかっている状況がうかがえます。



1億円未満の物件は在庫が減少傾向
これとは対照的に、「1億円未満」の中古マンションについては、在庫数が明確に減少傾向を示しています。

このことから、現在の首都圏中古マンション市場では、「1億円」という価格が売買の一つの大きな分岐点になっていることがわかります。1億円を超える高額物件が売れ残ることで、全体の在庫㎡単価を押し上げている要因の一つと考えられます。
高額物件が売れにくくなっている背景
では、なぜ1億円を超える中古マンションが売れにくくなっているのでしょうか。主な要因として、以下の2点が挙げられます。
1. 住宅ローン金利の上昇
中古マンション購入者の多くは住宅ローンを利用します。金利が上昇すると、同じ年収で借りられる金額や、無理なく返済できる月々の負担額が変わってきます。特に1億円を超える高額物件では、必要な借入額も大きくなるため、金利上昇による返済負担の増加が購入判断に与える影響はより大きくなるでしょう。これまで低金利を前提に形成されてきた住宅価格に対し、購入者側の資金調達環境が変化していることが、高価格帯物件の需要を減少させている可能性があります。
2. 価格上昇による「代替需要」の発生
首都圏の中古マンション価格は長期間にわたって上昇してきました。その結果、以前なら購入できた価格帯の物件が、今では手の届きにくい価格になっているケースも少なくありません。このような状況で、購入者は「物件を買わない」という選択をするだけでなく、「購入する物件の条件を調整する」という行動を取る傾向があります。
例えば、希望する都心エリアから少し離れた場所を選ぶ、駅からの距離を調整する、築年数が古い物件も検討する、専有面積を小さくする、タワーマンションなどの人気物件から一般的なマンションに目を向ける、といった形で、購入可能な価格帯に収めようとする動きです。これは、購入者が市場から完全に撤退しているわけではなく、「買える範囲」で最適な物件を探している「代替需要」が生まれていることを示唆しています。
今後の市場は「価格帯による二極化」が鍵
このように考えると、現在の首都圏中古マンション市場を分析する際には、単に「成約㎡単価が下落した」という数字だけを見るのでは不十分です。重要なのは、「どの価格帯の物件が売れていて、どの価格帯の物件が売れ残っているのか」という市場の構造を理解することです。
今後、住宅ローン金利がさらに上昇した場合、この二極化の傾向は一層強まる可能性があります。1億円を超える物件については、価格や借入額、月々の返済額が購入者の意思決定に大きく影響するため、売却のためには価格調整が必要になるケースが増えるかもしれません。
一方で、1億円未満の物件については、購入者がエリアや築年数、面積などを調整することで、引き続き安定した需要が維持される可能性があります。これからの住宅購入や売却を検討される方は、市場全体の下落というよりも、ご自身の予算や希望する物件の価格帯が市場でどのような位置づけにあるのかを慎重に見極めることが大切です。
賢い住まい選びのために
市場の動向は常に変化しています。現在の首都圏中古マンション市場は、表面的な数字の裏側に、価格帯ごとの異なる動きが隠されていることがわかりました。
これから住宅の購入を検討される方は、平均価格や㎡単価だけでなく、「どの価格帯の在庫が増えているのか」「どの価格帯の物件が実際に売れているのか」という視点を持って情報収集することが、賢い住まい選びにつながるでしょう。ご自身のライフスタイルや予算に合った物件を見つけるために、専門家への相談も有効な手段です。詳細な市場分析やご自身の物件の価値を知りたい場合は、以下のサービスも参考にしてみてはいかがでしょうか。
筆者プロフィール

福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社 データ事業開発室 不動産データ分析責任者
福嶋総研 代表研究員
早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供しています。
福嶋総研 公式ページ: https://mansionresearch.co.jp/fri/
マンションリサーチ株式会社の関連サービス
-
全国14万棟 分譲マンション価格相場公開サイト『マンションナビ』: https://t23m-navi.jp/
-
不動産データクラウド: https://fudosan-data.jp/
-
ロボ査定: https://robosatei.jp/
-
分譲マンション、土地、戸建てデータ販売: https://mansionresearch.co.jp/re-data/
-
不動産市場解説動画チャンネル: https://www.youtube.com/@mansionresearch/videos


