市場動向

中央区湾岸タワーマンション市場に変化の兆し!「実需」と「投資用」で異なる動き、あなたの住まい探し・投資戦略はどう変わる?

中央区湾岸タワーマンション市場に変化の兆し!「実需」と「投資用」で異なる動き、あなたの住まい探し・投資戦略はどう変わる?

実需タワーマンションは在庫増加と「売れ行き」低下が同時進行

まず、ご自身で住むことを目的とした「実需(じつじゅ)物件」のタワーマンションの動向を見てみましょう。以下のグラフは、中央区の実需タワーマンションにおける在庫数と在庫回転率の推移を示しています。

中央区湾岸実需タワーマンション : 在庫の推移と在庫回転率

ここでいう「在庫回転率」とは、市場に出ている物件に対して、どれくらいの物件が実際に売れているのかを示す「売れ行き」の指標です。この数値が高いほど、物件が市場で売れやすい状態にあると考えられます。

このグラフを見ると、2024年頃から実需タワーマンションの在庫数が継続的に増加していることがわかります。これは、市場に売り出される物件が増えていることを意味します。一方で、在庫が増えるのに合わせて、在庫回転率は大きく低下しています。

この「在庫増加」と「在庫回転率の低下」が同時に進んでいる状況は、市場に売り出される物件は増えたものの、以前と同じペースで買い手が吸収しきれていない可能性を示唆しています。つまり、「売り物件が増えた」だけでなく、「売り物件が増えたものの、以前と同じペースでは買い手が吸収できなくなっている」と考える必要があるでしょう。

在庫増加が価格調整につながる構造

このような市場環境では、売り主の方にも変化が生じてきます。以前であれば、多少時間がかかっても、周辺の成約事例を参考に強気の価格設定で売却を待つことができました。

しかし、似たような物件が市場に多数出てくると、買い主は複数の物件を比較検討できるようになります。特にタワーマンションの場合、同じマンション内や近隣のマンションで、間取りや階数、方角、広さなどが似た物件が競合することも少なくありません。そのため、売却を急ぐ売り主ほど、周辺の競合物件よりも価格を下げる必要が出てくることがあります。

そして、ある物件の値下げが周辺物件の価格にも影響を与え、それを見た別の売り主が価格を見直す、という動きが生まれます。現在見られている急激な値下げの動きは、こうした在庫増加と市場の流動性(売買のしやすさ)の低下が価格に波及した結果と捉えることができます。

投資用タワーマンションは在庫が増えても「売れ行き」は比較的安定

では、ご自身で住むのではなく、賃貸に出して家賃収入を得ることを目的とした「投資用」、いわゆる「オーナーチェンジ物件」のタワーマンションの動向はどうでしょうか。

中央区湾岸オーナーチェンジタワーマンション: 在庫の推移と在庫回転率

実需物件と同様に、投資用タワーマンションも2024年頃から在庫が大きく増加していることがわかります。タワーマンション市場全体で、売り物件が増加しているという点では、実需と投資用に共通した動きが見られます。

しかし、その後の推移を見ると違いが現れます。投資用タワーマンションの在庫は2024年頃から増加した後、2025年5月頃をピークとして、その後はおおむね横ばいで推移しています。実需物件のように在庫が増え続けているわけではありません。

さらに重要なのは在庫回転率です。投資用タワーマンションについては、在庫回転率に一定のばらつきはあるものの、実需物件ほど大きく低下しているわけではなく、比較的安定した動きを見せています。これは、投資用タワーマンションも供給過多の状況にはなっているものの、市場に出てきた物件が一定のペースで売買されていると考えることができます。

オーナーチェンジ物件は「価格の決まり方」が違う

同じタワーマンションなのに、実需物件と投資用物件で、なぜこのような市場の動きの違いが生まれるのでしょうか?その大きな理由の一つが「価格の決まり方」の違いです。

実需マンションの場合、購入者が実際に住むことを前提としているため、駅からの距離、眺望、階数、間取り、室内の状態、周辺環境など、様々な要素が複合的に価格に影響します。住む方の「住みたい」という感覚的な判断も大きく影響すると言えるでしょう。

一方、オーナーチェンジ物件の場合は、すでに入居者がいて賃料収入が発生しているため、投資家はその「収益性」を重要な判断材料とします。そのため、将来得られる収益を基準に価格を判断する「収益還元法(しゅうえきかんげんほう)」などを用いて評価されます。

一般的に、同じマンションで同じような広さの住戸であっても、ご自身で住むための実需物件と比較すると、オーナーチェンジ物件の価格は低くなる傾向があります。また、同じ投資用物件であっても、現在の賃料が異なれば、投資家から見た収益性も変わるため、価格も変わってきます。賃料が高い物件は収益性が高まり、逆もまた然りです。

市場の中に「割安物件」を見つける余地がある

この「価格の決まり方」の違いが、現在の市場における投資用タワーマンションの流動性を支えている可能性があります。

実需物件の場合、購入者の多くは「自分が住みたいか」という感覚的な判断も含めて物件を比較します。そのため、価格が高すぎると判断されれば、購入を見送るという選択につながりやすくなります。

一方、投資用物件では、物件価格と賃料収入から利回りを計算することができます。そのため、市場にある物件を一つ一つ精査していけば、「この条件なら価格が割安なのではないか」と判断できる物件が見つかる可能性があります。

もちろん、利回りだけで投資判断をすることはできません。賃料が相場より高く設定されている場合や、将来的な賃料下落の可能性、管理費・修繕積立金の上昇、物件固有のリスクなども考慮する必要があります。しかし、こうした条件を一つ一つ吟味できることが、投資用市場の特徴でもあります。

これからは「タワーマンション」という括りだけでは見えない

今回の調査データから重要なのは、「在庫が増えている」という一つの現象だけでは、市場の状態を判断できないということです。中央区湾岸のタワーマンションでは、実需物件、投資用物件の双方で在庫が増加しています。

しかし、実需物件では在庫増加とともに「売れ行き」が低下しているのに対し、投資用物件では在庫が一定のところで横ばいとなり、「売れ行き」も比較的安定しています。これは、同じ「在庫増加」であっても、その背景にある需要構造が異なることを示唆しています。

今後、中央区湾岸のタワーマンション市場を見るうえでは、「価格が上がった」「在庫が増えた」「値下げが増えた」という表面的な数字だけを見るのでは不十分です。重要なのは、誰が売り、誰が買い、どのような価格形成によって売買されているのかという点でしょう。

これからのマンション選びでは「このマンションは人気があるのか」だけではなく、「その物件は実需なのか投資用なのか」「現在の価格は何によって決まっているのか」「在庫に対してどれだけ売れているのか」という視点が、これまで以上に重要になってくるのではないでしょうか。ぜひ、これらの視点を取り入れて、あなたの理想の住まいや賢い投資を見つけてくださいね。


筆者プロフィール

福嶋 真司

福嶋 真司(ふくしま しんじ)
マンションリサーチ株式会社 データ事業開発室 不動産データ分析責任者
福嶋総研 代表研究員

早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供しています。

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