市場動向

首都圏中古マンション価格、本当に下落?賢い住まい選びのための市場動向を読み解く

首都圏中古マンション価格、本当に下落?賢い住まい選びのための市場動向を読み解く

首都圏の価格変動、東京都が牽引する実態

東日本不動産流通機構(REINS)が公表したデータによると、2026年5月度と6月度には、首都圏の中古マンション成約㎡単価(マンションが実際に売れた価格を、専有面積1平方メートルあたりに換算した金額)が2ヵ月連続で下落しました。この数字だけを見ると、市場全体が下落局面に入ったように思えるかもしれません。

しかし、マンションリサーチ株式会社の調査によると、首都圏(一都三県)の成約坪単価(マンションが実際に売れた価格を、1坪=約3.3平方メートルあたりに換算した金額)の推移を都道府県別に見てみると、最も特徴的な動きを見せているのは東京都です。2026年4月頃から東京都の成約坪単価は明確に下落に転じており、その下落幅は神奈川県、埼玉県、千葉県と比較しても大きくなっています。

首都圏都道府県別中古マンション成約坪単価推移

この東京都全体の価格下落は、さらに細かく見ると、都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)での価格調整が強く影響していると考えられます。一方、都心5区を除く東京23区では、成約坪単価は依然として高い水準を維持しており、大きな下落は確認されていません。

都心5区で「値下げしても売れない」状況に

都心5区の市場を詳しく見ると、「販売期間」と「値下げ回数」という指標に変化が見られます。これらの指標は、不動産がどれだけスムーズに売買されるかを示す「流動性」を表します。

都心5区: 中古マンションの販売日数と値下げ回数

都心5区では、直近数ヶ月で値下げ回数が急激に増加しているにもかかわらず、販売期間も同時に長期化しています。これは、価格を下げてもすぐに買い手が見つからない状況、つまり市場の流動性そのものが低下していることを示唆しています。このことから、都心5区では需給バランス(市場における買いたい人と売りたい物件のバランス)が変化し、価格形成が転換点を迎えている可能性が高いと言えるでしょう。これまでの価格上昇を牽引してきた超高額帯市場では、買い手が価格に慎重になり始めているのかもしれません。

実需エリアは底堅さを維持

一方で、都心5区を除く23区では全く異なる市場環境が見えてきます。

23区(都心5区を除く): 中古マンションの販売日数と値下げ回数

こちらのエリアでは、販売期間、値下げ回数ともにわずかな上昇は見られるものの、依然として低い水準にあり、高い流動性が維持されています。これは、実際に住むことを目的とした住宅取得ニーズが依然として堅調であることを示しています。住宅ローン金利が上昇しているとはいえ、生活利便性や通勤利便性の高いエリアでは、購入層の需要が価格を支えていると考えられます。

都心5区のような高価格帯市場は、投資目的や資産保有目的の購入割合が比較的高いため、金利上昇や景気の先行き不透明感の影響を受けやすい傾向があります。そのため、現在の市場では、「首都圏全体が弱まっている」のではなく、「超高額帯市場だけが先に調整局面へ入り、それ以外の実需市場は底堅さを維持している」という二極化が進んでいると見ることができます。

首都圏市場は「下落」ではなく「需要の再配置」

さらに、首都圏全体に占める東京都の成約件数の割合は近年、徐々に低下しています。これは、神奈川県、埼玉県、千葉県の成約件数の割合が相対的に増加していることを意味します。

東京都 : 中古マンション成約件数割合

価格が高騰した東京都から、比較的購入しやすい周辺三県へ需要がシフトしている可能性が高く、住宅取得者の予算制約が強まる中で自然な市場行動と言えるでしょう。金利上昇によって住宅ローンの返済負担が増加すれば、購入可能価格帯は低下します。その結果、同じ予算でより広い住戸を取得できる周辺エリアへ需要が移ることは十分に考えられます。

今回の首都圏中古マンション価格の動向は、単なる「下落」ではなく、市場の中心が変わり始めている「需要の再配置」が起きていると読み解くことができます。最も価格水準の高い都心5区で価格調整が進み、その影響で首都圏全体の平均価格が押し下げられている一方で、実需が中心となるエリアでは需要が維持され、購入層が価格とのバランスを重視して現実的な価格帯のエリアへ移動しているのです。

これからの住まい選びのヒント

今後も金利環境や住宅ローン負担の変化が続けば、この需要シフトはさらに進む可能性があります。そのため、これからの住まい選びにおいては、首都圏全体の平均価格だけで判断するのではなく、検討しているエリアの流動性や成約件数の変化を合わせて分析することが、これまで以上に重要になるでしょう。

ご自身のライフスタイルや予算に合った最適な住まいを見つけるためには、希望するエリアの市場動向を詳しく知り、専門家のアドバイスも参考にしながら、賢い選択をしていくことが大切です。気になる物件やエリアがあれば、積極的に情報収集を行い、見学や相談を通じて、理想の暮らしを実現するための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。