日本の「家を買う」はなぜ重い?
海外、特にアメリカでは、住宅購入がもっと気軽に、ライフステージに合わせて繰り返される選択肢の一つとして捉えられています。オンラインで住宅ローンを申請し、スマートフォンで内見予約、電子署名で契約が完結するなど、テクノロジーを活用したスムーズな取引が一般的です。
一方、日本では売り主と買い主はもちろん、複数の仲介業者、銀行、保険会社、司法書士、土地家屋調査士など、多くの関係者が関わります。それぞれが異なる書類や審査基準を持ち、決済日には関係者が一堂に会して書類に押印し、ローンを実行し、登記を移転するといった、まるで儀式のようなプロセスが数時間で連鎖的に行われます。こうした手続きの連鎖が、日本の住宅取引を「重く」感じさせる一因となっています。

情報の壁と信頼の構造
日本の不動産取引の「重さ」は、情報の集め方にも課題があります。物件情報は不動産業者向けのデータベース(レインズ)に集約されていますが、消費者は直接アクセスできません。多くのポータルサイトに掲載されている情報は重複が多く、同じ物件が異なる情報で掲載されていることも少なくありません。
さらに、中古住宅市場では、売り手の方が物件の状態をよく知っているという「情報の非対称性」が存在します。この情報の偏りが、品質の良い中古住宅が市場に出回りにくくする原因の一つとも言われています。
日本と海外の制度を比較すると、この違いがより明確になります。
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アメリカ:エスクロー会社(第三者機関)が情報・資金・登記・保険を集約し、権原保険(Title insurance)が登記の連続性を保証します。個別の専門家の信頼に頼らず、制度が信頼を担保する仕組みです。
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日本:仲介業者、司法書士、銀行、保険会社などが個別の信頼関係でつながっています。プロフェッショナル同士の暗黙の協調で取引が進む「美しい慣習」とも言えますが、同時に外部からの参入障壁が高く、消費者には取引の全体像が見えにくい構造となっています。
この「重さ」が長年温存されてきた背景には、日本人が生涯に住宅を購入する頻度が低いこと、業界の収益構造、そして対面・書面・押印を前提とした古い規制と慣習の絡み合いがあります。また、煩雑な手続き自体が「これだけの手続きを経ているのだから間違いはない」という安心感を消費者に与えてきた側面もあるでしょう。

PropTechがひらく未来の住まい探し
こうした日本の不動産取引が抱える「重さ」に対し、PropTech(不動産テック)は大きな変革をもたらす可能性を秘めています。PropTechとは、不動産(Property)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、不動産分野にテクノロジーを導入し、新たなサービスや価値を生み出す動きを指します。
テクノロジーの力で情報がもっと透明になり、手続きが簡素化されることで、私たちはもっと自由に、そしてもっと安心して住まいを選び直せるようになるかもしれません。例えば、物件情報の集約、AIによる価格査定、電子契約の普及などが考えられます。これにより、住まい探しにかかる時間や労力が大幅に軽減され、一人ひとりのライフプランに合わせた柔軟な住み替えが実現する未来がきっと来るでしょう。
この連載では、不動産経済学の専門家である清水千弘氏が、日本の不動産取引の課題とその解決策としてのテクノロジーの可能性を深く掘り下げています。詳細については、ぜひPropTech-Labの公式サイトでご覧ください。
『PropTech-Lab(プロップテック・ラボ)』について

『PropTech-Lab』は、不動産市場に新たな価値をもたらし、人々が住まいを選ぶ際の新たな基準や簡便さ、価値観を醸成し、提供することを目指しています。市場のニーズに応え、価格高騰のスパイラルを抑制し、より多くの人々が質の高い住宅を手に入れられるよう努めています。
所長:清水 千弘 氏
一橋大学大学院ソーシャルデータサイエンス研究科教授、社会科学高等研究院都市空間不動産解析研究センター・センター長。

株式会社property technologiesについて
株式会社property technologiesは、「UNLOCK YOUR POSSIBILITIES. ~テクノロジーで人生の可能性を解き放つ~」というミッションを掲げ、年間36,000件を超える不動産価格査定実績やグループ累計約15,000戸の不動産販売で培ったリアルな取引データ・ノウハウを背景に、「リアル(住まい)×テクノロジー」で、誰もが、いつでも、何度でも、気軽に住み替えることができる未来を目指し、利便性の高い不動産取引を提供しています。


